新年のごあいさつ -キャンプ60年を迎えるにあたり-

新年あけましておめでとうございます。

皆様におかれましては、新春を清々しい気持ちでお迎えのこととお慶び申し上げます。昨年もコロナ禍の中、多くの方々のご協力をいただいたお陰で、予定した事業を無事終えることができましたことに心よりお礼申し上げます。

サマーキャンプが来年で60年目を迎えますので、キャンプと当会の過去を少し振り返ってみたいと思います。

1963年(昭和38年)に当時東京大学医学部小児科医の丸山博先生(現松戸クリニック名誉院長)が、8人の児童(小学1年~中学1年)を連れて、千葉県勝山海岸に行き、1週間の療養指導などを行ったのが、日本におけるサマーキャンプの始まりです。その後、野辺山、日本平、清里など、場所を変えて実施され、第8回目からは、それまで保護者も参加していたキャンプが、親子分離で行われるようになりました。1981年に丸山先生が福島県伊達郡霊山(りょうぜん)町(現在伊達市)に自費を投じて霊山トレーニングセンターを建設されたことで、第19回目以降つぼみの会専用キャンプ施設として、理想的なキャンプが開催されるようになりました。ところが、2011年の東日本大震災による原発事故で使用を見合わせることになり、2017年までの間は御殿場にある社会教育センターを貸切っての実施となりました。霊山の安全性が確認されたことにより、施設を改修し、2018年から霊山トレーニングセンターでのキャンプが再開されました。しかしコロナ禍で日糖協がキャンプ中止を決めたことを受け、発足以来初めて、また2年連続でキャンプ中止を余儀なくされました。丸山先生が2000年にNPO法人を設立し、霊山トレーニングセンターを寄付されましたので、NPO小児慢性疾患療育会がそれ以降施設の管理運営を行っています。何よりも初めてのキャンプ参加児の多くの方がお元気で過ごされていることに喜びを覚えるとともに、そのお一人である冠利江さんが、現在事務局でキャンプ事務を担当されていることに意義深さを感じます。

一方つぼみの会は、第1回キャンプの翌年にキャンプ参加児の保護者8人によって結成され、石原喜芳さんが初代会長となり発足しました。その翌年には家族講習会も行われ、家族同士の交流も生まれますが、会の活動は流動的でした。1970年代にはキャンプがマスコミなどでも取り上げられ、つぼみの会の名は全国的に知られるようになり、その後全国に「○○つぼみの会」が続々と結成されました。キャンプ30周年を契機に会を充実、発展させたのが常松之忠会長(現運営委員)です。ご夫婦で土・日を会の作業に費やされ、現在の会を築きました。私も副会長として、常松会長と、医療費無料化や病名変更運動(小児糖尿病から、丸山先生が考えたインスリン欠損症に変える)など、当時ならではの活動を思い出します。

事務所は東大病院の一部をお借りするなどしてきましたが、岡本宗重前代表(現運営委員)のお力で、あいおいニッセイ同和損保のご厚意によりビルの1室を無償で、2004年12月からお借りすることができました。印刷機、コピー機なども備え、安心かつ機能的な専用事務所として活動の拠点となり、現在に至っています。

以上、キャンプと当会のさわりを述べましたが、学内の反対もある中、患者のためがすべてに優先する、との信念からキャンプを実行した若き丸山医師の勇気と決断が無ければ、小児糖尿病の夜明けは大きく遅れたことでしょう。

キャンプも、つぼみの会も、現存しているのは多くの方々のご支援の賜物ですが、今後もより一層のご理解、ご協力をお願い申し上げます。

2022年1月

つぼみの会 代表 神嶋 威