10月26日 秋の家族講習会が開催されました

10月26日日曜日、つぼみの会の主要行事「秋の家族講習会」が新宿のあいおいニッセイ同和損保新宿ビル3階会議室で開催されました。小雨の降るあいにくの天気でしたが、会場には多数のご家族が来られました。

最初は体験談の発表、中村彩里さん「ひっくり返った!」です。

六本木ヒルズが完成した2003年に生まれた21歳。

小学校5年生の時に学校検尿で尿糖が出ていることがわかり、低糖質食・運動療法を経てインスリン療法へ。CSII、CGMなどいろいろ試し、現在はペンでコントロールをしているそうです。「ひっくり返った!」というタイトルで、発症してからの不安、もやっと思うこと、それを自分の中でどう昇華し、病気と向き合ってきたかをわかりやすく話してくれ、私個人(当事者運営メンバー)的には共感の嵐でした。

「治療をしていて何が悪いの?」くらいの強い気持ちでいると話してくれましたが、発症当時を思い出すと実は病気を受け入れられない自分がどこかにいて、キャンプ初回は行くのが嫌だったとか、人生で余計な荷物が増えてしまったと思うこともあったそう。不安な中行ったキャンプで聞いた先輩の低血糖の話が面白くみんなで大笑いしたときに「病気を面白くとらえることもできるんだ!」と気づくことができたとのこと。中村さんにとってキャンプでできた友達は病気が繋いでくれた縁。様々な経験を経て、継続して生活スタッフとしてキャンプを支えてくれている中村さんは、子供たちの素敵なお手本だなと思いました。「自分にとって楽な方法で治療に向き合えばいいんだよ」というメッセージと、当時の自分の心に一つ一つ向き合って解きほぐして丁寧に話してくれた姿は、凝り固まった私たちの心もほぐしてくれた気がします。

続いて菊池透先生(埼玉医科大学病院 小児科 教授)の講演。演題は「みなさんは、医学・医療の進歩のアンバサダー」です。

インスリンの発見から現在進む新たな薬の話、そして誰もが向き合う思春期の話…愛溢れるエールを菊池先生のお話からもらえた気がしました。インスリンはペニシリンよりも早く発見され、約5カ月で人に投与されるほどすごい速さで開発が進んだこと、利益度外視で製薬企業と大学が製品化してくれたこと、インスリンに関連したノーベル賞受賞は7回もあること……そんな歴史を学びました。「インスリン製材1本に、100年以上も前からの多くの人の想いが詰まっているんだよ」とメッセージを聞いて、自分のインスリンポーチを持ったらとても重たく、有難い気持ちになりました。そして「あなたたちがインスリン注射をして生きて人生を送れているのは、医学の進歩の証明であり、研究成果の証明であるんだ」と聞いて、私たちが生きる意味みたいなものを感じた気がします。

現在1型糖尿病発症前の検査と、発症を遅らせる薬の治験が日本で進んでいる話と、長年の研究から見えてきた年齢や年代によるHbA1cの変化やデバイス使用率の変化を示していただきました。最新の研究や医学の進歩の中で、いつの時代もある思春期の壁。その向き合い方のヒントを最後にいただきました。大事なことは、「Respect and Believe」。1型の子供たちの日々の生活の努力をRespectし、いつか気づいて変わってくれることをBelieveして待つ姿勢。そしてできなかったことを責めるのではなく、やろうと思ったこと、できたことを褒めることが大事と話してくださいました。糖尿病を持つ人に対しては「1型の人は高度な医学・医療 医療者 自分自身 のアンバサダー。自信をもって生きていきましょう」と締めくくってくださいました。命の有難みを感じ、菊池先生のような心強い味方がいるんだと思うことができて、胸が熱くなりました。

家族講習会の最後は恒例の分科会(グループミーティング)です。6つのグループに分かれ、つぼみの会の顧問医や講師の先生を交えて色々なお話をしました。

A.発症後間もない患児の相談

B.血糖値管理や成長期の心身の変化に関する相談

C. ポンプ、AID、リブレなどに関する相談

D. 菊池先生、中村さんを囲んでフリートーク)

E。大人の患者同士のフリートーク

F.子どもの患者同士のフリートーク

兼松先生の閉会の挨拶で、4時間にわたる秋の家族講習会が終了しました。先生方、ご来場された皆さん、本当にありがとうございました。