9月1日 夏の家族講習会が開かれました

残暑厳しい9月1日の日曜日、つぼみの会の恒例行事「夏の家族講習会」が新宿のあいおいニッセイ同和損保ビル3階会議室で開催されました。広い会場が満員、椅子を補充するほど大勢のご家族が参加してくださいました。

第1部の講演は、JCHO 東京山手メディカルセンター糖尿病内分泌科部長 山下滋雄先生。演題は「いざというとき慌てないために、白鳥が水面下で行うこと」。
「さかえ」に長年「鉄人だより」を連載し、鉄道マニアとして知られた先生ですが、自転車にも心血を注がれ、隔月刊「プラクティス」に鉄道と自転車のエッセイ『鉄・輪だより』を連載中、さらにcTDJ(cycling Team Diabetes Japan)というサイクリングチームを作ったとのことです。
糖尿病治療の目指すところは、最終的には、糖尿病が自分の人生、人格のほんの一部に過ぎないという認識を持つこと。夢や希望を実現する。糖尿病だからという理由で簡単にあきらめない。とても強い言葉だと思いました。先生は1型糖尿病の医師の組織、DT1D(Doctors with Type 1 Diabetes)の発起人のひとりです。医師が患者であることは、患者としての痛み苦しみがわかり、患者が何を望んでいるかがわかる、とも。
血糖自己測定の進歩にはめざましいものがあります。
我々(T1D)の合言葉は
・いつでも
・どこでも
・何度でも
注射も・・・インスリン注射へのハードルを低くする工夫
血糖測定も・・・フリースタイルリブレの登場により変わった
何だか、目からウロコが落ちるようなお話でした。
さらに、SMBGとリブレとのデータの比較、先生が自転車レースに参加した時のデータの説明など、非常に楽しく、ためになるお話で、1時間の講演がとても短く感じられました。

第2部の体験談は20歳のプロテニスプレーヤー、宗理美(そうりみ)さん。テーマは「私とテニスの16年~スポーツを通して学び続けています」
5歳の時に1型糖尿病を発症、その時の様子をお母さんが話してくれました。
「双子で毎日同じ生活をしていたのに、理美だけ3日連続おねしょをしました。おかしいと思い、近くの病院に行くと、すぐに大学病院へ行くように言われました。その病院から大学病院まで電車で30分くらいでした。その間全て、抱きかかえたまま一度も理美をおろさなければ治るかもしれない、何かの間違いしれないと思い、腕がもげそうになりましたが(すいている電車もわざとたったまま)願かけをしましたが、ダメでした。」
我が子が1型を発症した時、多くの親が衝撃と困惑を経験しますが、これほどまでに・・・!会場に驚きと感動の波紋が広がりました。
お母さんの勧めで、双子の姉、公美さんと共にテニスを始めた理美さんは、元気に育ちました。小学生になり、少しずつ自分でコントロールできるようになりました。最初お母さんがつけていた血糖値ノートも自分でつけるようになり、いまでは、日記代わりの大切な習慣になっているそうです。
海外遠征で気を付けること、試合の注意(普段よりも血糖値が高くなる)、フリースタイルリブレを使い始めて変わったこと、低血糖時の補食、失敗談・・・ご自分が体験して分かったことを生き生きと話してくれました。結びで、「1型糖尿病だからって社会的に頑張る必要はなくて、人生を楽しむ」、「1型糖尿病はおまけの経験」、「1型糖尿病と仲良く生きていく」と、目を輝かせて話す宗さんが、とても力強く、美しく見えました。

第3部は分科会。

(A)幼児~小学校低学年の患者と家族など、(B)小学校高学年~高校生の患者とご家族、(C)大学生、社会人の患者とご家族、(D)成人になってから発症した患者たち、の4つのグループ(ただし。Bグループは参加者が少なかっためAに統合)に分かれ、普段主治医に質問しにくいことなど、色々な話をしました。特に5月の春の家族講習会から新設した、成人発症の患者のグループに予想以上の参加者がありました。

5時で一度閉会になり、別室で茶話会を開きました。先生方、参加された皆さん、スタッフの皆さん、ありがとうございました。長い時間お疲れさまでした。