私とテニスの16年 宗 理美(そう りみ)

Photo:Jun Yamashita

はじめまして、宗 理美です。私は現在20歳です。4歳で1型を発症し、それからテニスを始めました。運動が良いと聞いた母が、近所にあるテニスクラブに連れていってくれたことがきっかけです。そこから私はテニスに夢中になり、いつしか生活の中心がテニスとなっていきました。そして、11月からプロのテニス選手として活動を始めました。今回は、私のテニス中の血糖コントロールや工夫していることについて書きたいと思います。スポーツをされている方の参考になれば、嬉しいです。

Photo:Jun Yamashita

普段は、食前にノボラピッドの超速効型インスリンと、イーライリリーのグラルギンの持効型インスリンを打っています。また、去年の2月からグルコースモニタリングシステムのフリースタイルリブレを装着して生活しています。
テニスをする前は、血糖値が150~200くらいになるようにしています。テニス前に血糖値が低いときは、タブレット(最後に書いてあります)、飲むヨーグルト、ヤクルト、ゼリー、カステラ、クッキー、ジュースなどの補食を摂ります。そして、テニスをやりたくても、血糖値が120くらいに上がるまでは、我慢して休むようにしています。以前、私は血糖値が低い時に、大丈夫だと思い、無理をしてテニスをやってしまったことがありました。練習中に低血糖になり、補食をしてプレーを続けました。けれども、いつもなら入るショットが入らなくなり、同じミスを繰り返してしまいました。その時、「あれ、おかしいな」と思いましたが、補食をしたので低血糖のせいとは考えずに自分の技術の問題だと思いました。しかし、練習後に測ると、まだ低血糖状態で練習中からずっと続いていたことが分かりました。自分では気づかないうちに、低血糖はプレーに悪影響を与え、本来自分の持っているパフォーマンスを出せなくしてしまいました。さらにその後、血糖値が正常になっても、体がとてもだるくて重くなり、疲れてしまい、血糖値が低い時は、休んでおけば良かったと後悔しました。逆に血糖値が高い時には、追加で注射を打ちます。私の場合は、200で超速効1~2単位、250で2~3単位、300で3~4単位を目安にしています。そして、低い時と同様に、血糖値が高すぎる時には、休憩をするようにしています。また、間食する場合は、運動中の低血糖を防ぐために、追加打ちを普段よりも1~3単位減らして打つようにしています。
テニス中は、水分補給時に、こまめにリブレで測り、補食や追加打ちをします。また、急な低血糖に気をつけるようにしています。少しだけ高い時(私の場合は190前後)にはすぐに追加打ちをしない場合もあります。それは、後から効いてくるインスリン、直前の食事、運動強度により、血糖値がそこから下がっていくことが、よくあるからです。以前、テニス中に少し高い時があり、追加で打つかどうか迷った後、結局、追加打ちをしました。すると、その後、血糖値40以下となり、なかなか回復せずに苦しい経験をしました。それ以来、少し高い時は、様子を見て、次のリブレの値や矢印の方向で追加打ちの判断をするようになり、テニス中の低血糖が減りました。さらにテニスをした後は、夜まで血糖値が下がることがあるので、低血糖に気をつけています。そして、夜に打つグラルギンを1~3単位減らして打つようにしています。
テニス中に限らず、リブレのおかげで、より早い段階で、低血糖と高血糖がわかるようになりました。そのため、早めの対処ができるようになり、以前よりも血糖コントロールのストレスが軽減され、テニスに集中して取り組めるようになりました。

血糖値ノート

カバヤのジューCラムネ”タブレット”

私は低血糖時に食べるようにしている“タブレット”と呼んでいるものがあります。それは、カバヤのジューCラムネです。私の場合、ジューC1粒で血糖値が約5~10上がると考えています。ポケットやいつも持ち歩いているインスリンポーチ、バッグなどにジューCグルコース2粒とジューCサイダー3粒の計5粒を個装袋に入れ、まず約50上げるようにしています。このタブレットの5粒セットは、私がまだ幼かったころ、母が、低血糖時にすぐ甘いものが食べられるようにと考えて用意してくれてから、食べるようになりました。実際に、何度もこのタブレットに助けられました。私が小学4年生の時の初めての移動教室で、インスリンポーチしか持っていなかった時に、低血糖になったことがありました。周囲に甘いものがなく、焦った時に、インスリンポーチに入れていたタブレットを思い出し、さっと取り出してすぐに食べました。そのおかげで低血糖が回復し、安心したことを覚えています。また、クッキーなどのお菓子と違い、友達に誤解されることもなくすんなり食べることができました。このように普段から持ち歩くことができ、また、人目を気にせず口に運べるタブレットは、私の大切な必需品です。

私は、テニスをして大変なことが多いのですが、それ以上にたくさんのことを学びました。小さいときは、テニス中の血糖コントロールがうまくいかずに悔しい思いをしたり、プレー中の自己注射がとても嫌でした。ですが、そんなことを気にしていられないくらいテニスに夢中になっていきました。私はそういうテニスに出会えたことを大切にしてこれからも頑張っていこうと思います。

*宗理美さんはつぼみの会の会員です。本文はつぼみ事務所便り2018年12月号より転載いたしました。宗さんへのお便り、応援メッセージをぜひ事務局までお寄せください。